「えっと、チンジャオロースと、春巻き、あとレタスチャーハンと、油淋鶏。あ、やっぱりレタスチャーハンじゃなくて汁なし担々麺と半チャーハンのセットに変更でお願いします」

「かしこまりました。少々お待ちください」

………………

ええ~~!!!
繰り返してよ~! 


バックトラッキング



『ご注文を繰り返させていただきます』

というお馴染みのセリフは、実は『バックトラッキング』の基本。


心理カウンセリングの現場では『オウム返し』と呼ばれている傾聴技法です。
(※『傾聴技法』:相手の話をしっかり聴くための技術・方法のこと)


上記の例でもわかりますように『注文、繰り返してよ』と思うのは、その内容が本当に相手に伝わっているのか、わかってもらえているのか、に不安を覚えるからです。


『チンジャオロース』『油淋鶏』が運ばれてきても、『春巻き』、そして最大の難所、変更した『汁なし担々麺と半チャーハンのセット』が揃うまで気が抜けない。

最初にお願いした『レタスチャーハン』が運ばれてきてしまったら、その時は「これは違う」と言うべきなのか、それとも、途中で変更した自分が悪いということで甘んじて食べるべきか……


もう、どうでもいいムダな悩みまでお客さんは引き受けることとなってしまうのです。


そこでオウム返しに繰り返す。

すると、


「チンジャオロースと、春巻きと、油淋鶏と、レタスチャーハン改め、汁なし担々麺と半チャーハンのセット。はい、その通り!」


安心して待っていてもらえます。


『バックトラッキング』とは、上記『オウム返し』を対人関係全般にも当てはめた、聞き上手になるためのスキル、テクニックのこと。


もう少し詳しくいいますと、

  • 『オウム返し』:『カウンセリング用語』=『傾聴技法』
  • 『バックトラッキング』:『コミュニケーション心理学NLPでの用語』=『コミュニケーションスキル(技法)』
『NLP』というのは『神経言語プログラミング』のこと(英語表記での頭文字をとっています)。

その考えに基づいた『相手に合わせた会話のスキル』のひとつが『バックトラッキング』です。

さらに厳密にいえば『NLP(神経言語プログラミング)』とは、

  • 『心理学』というよりは『自己啓発』のジャンル
  • もしくは『心理学(社会心理学の社会的比較理論)』から、生活に役立つ部分を抜粋したものである(『通俗心理学』と呼ばれます)
といった捉え方をされているもの。


ですが『オウム返し』『バックトラッキング』ともに、


『相手に安心感を持ってもらうことで信頼関係を構築しやすくなる』

そのためのスキルである、という部分は重なっています。

手法にも、全くと言っていいほど違いはありません。


つまり、用語としては異なる分野で使われてはいるものの、上記2つは、手法・内容的にもほぼ同じ。

そもそもの目的だけが違うため、その捉え方に若干の差異がある、といった感じになっています。

(※ ── というわけで以下『バックトラッキング』=『オウム返し』としてお読みいただけますと助かります。よろしくお願いいたします)


前置きが長くなってしまいましたが、今回は「バックトラッキング(=『オウム返し』)」について。

なぜそれが有効な手法とされているのか、またその具体的な活用法等含めまして見ていってみましょう。

『バックトラッキング』ってなに?

単に『相手の言葉を繰り返す』だけのテクニック、と侮ってはダメです。

本当にこれだけをやられると、結構頭にきます。

    「今日何して遊ぶ?」
    「今日何して遊ぶ」
    「サッカーは?」
    「サッカーは」
    「おい、真似すんなよぉ」
    「おい真似すんなよ」
    「マジ、やめろって!」
    「マジやめろって」
    「オレ、今日お前と遊ばない!!」
    「オレ今日お前と遊ばない」
……懐かしいですね小学校時代……アホでしたが。

でも『バックトラッキング』とはこれじゃ、ないのです。


ただ繰り返すのではなく、大事なのは相手に『わかってもらえている』という安心感を覚えてもらうこと。


誰かに何かを話す、というのは当然ですが『聴いてほしい』と思っているから、なわけです。

さらに、ただ聴いてほしいだけではなく、その内容を『わかってほしい』。

    ──「昨日、図書館で〇子、見かけてさ」
    ──「それが目が合ったら慌てて図書館から出ていったんだよね」
    ──「で、オレ気づいたわけよ。あいつ、照れてんだよ。だから避けるんだ、オレのこと」
……仮にその『気づき』は大間違いだと思うぞ、と感じたとしても、まずは相手を受け入れることからです。


試練だと思って『バックトラッキング』を使い会話を成り立たせていきましょう。

繰り返しです。

    ──「昨日、図書館で〇子、見かけてさ」
    「図書館で〇子見かけたのか。で、どうした?」

    ──「いや、それが目が合ったら慌てて図書館から出ていったんだよね」
    「目が合ったら慌てて? 図書館から出ていったのか?」

    ──「で、オレ気づいたわけよ。あいつ、照れてんだよ。だから避けるんだ、オレのこと」
    「……なるほど、照れてるのか。だからお前を避けるんだな」
のような感じですね。

繰り返すだけでなく「で、どうした?」のように先を促す言葉を付け加えるのも効果的。

相手は自分の話に興味を持ってもらえた、と感じ、話を続けやすくなります。


『バックトラッキング』を使い相手の言葉を繰り返すことにより、

  • この人は、自分の話をしっかり聴いてくれている
  • その内容についても理解してくれている
と、感じてもらうことができます。

    「目があったら慌てて?(そうそう、そうなんだよ)図書館から出ていったのか?(そう、その通り)」
話し手はいちいち心の中で肯定的なツッコミを入れている状態。

ここが「へぇ、どうしたんだろうな」などですと、


「そう急かすな。とりあえずオレの話を聞いとけ」


のようにも思われかねません。


また、相手の言葉を繰り返さない返事は、場合によっては「今日の晩ご飯なんだろう」と考えながらでも返すことができます。

ですが、相手の使った言葉をそのまま繰り返す、ということは、上の空ではできないのですね。


だから『聞く』ではなく『聴く』


単に耳から入ってくる音として『聞く』のではなく相手とその話の内容に対し、積極的に気持ちを傾け『聴く』、です。


上記の例はさておき、本当に悩みなどを相談された場合を考えてみますと、この『姿勢』は非常に重要なポイントとなってくることがおわかりいただけるかと思います。


聞く

また『バックトラッキング』を使わず単に了解の意を示す返事をするだけの相手には、重要な頼み事をするのも少し不安。


頼み事の一部、最悪全部を忘れられてしまうのでは……


冒頭の「かしこまりました」だけで去っていくウェイトレスさんのパターンですね。

ここでも相手の言葉を繰り返すことにより、

    「明日の午後1時までですか」
    「割ける人員は15名 ── わかりました」
    「レインボーブリッジを封鎖するのですね」

    「よし、その通りだ。頼んだぞ!」
自分の話した内容がしっかり相手に把握されている、と安心してもらえます。

『バックトラッキング』で相手の話した内容を確認する感じです。


『相手の使った言葉』というのもポイントのひとつ。

何がなんでも絶対に同じ言葉で、とは言いませんが、一つの意味の言葉に何通りかの言い回しのあるもの、などの場合ですね。

  • 「彼女についに思いを伝えたぞ」
    →「ついにコクったのか」
    →「ついに告白したんだな」
  • 「厳しい状況だが、チャレンジあるのみだ」
    →「挑戦するしかないですね」
    →「確かに、アタックあるのみです」
  • 「このパスタ、おいしいよね」
    →「うん、このスパゲティはうまい」
    →「だね、このイタリア麺、最高!」
などなど。

相手の言葉ではなく、自分の言葉に置き換えて繰り返す。


……なんでわざわざ言い直すかなぁ……


「この人とは、どうも波長が合わない」と思われてしまいます。

そもそも、自分の伝えたいことが相手にちゃんと届いているのか、からして不安になってくる。


『イタリア麺』って、この人『パスタ』をそう捉えてるのか……自分とは感性が違いすぎる ──


ですので、こういった場合も『相手の話に使われた言葉』での繰り返しでいきましょう。


ここまでが、聞き上手になるためのテクニック『バックトラッキング』の基本部分。

こうして相手との信頼関係を築くための土台ができあがっていくのですね。


では続いて『単に繰り返す』だけではない、もう少しだけ高度なテクニックについて見ていきましょう。

『バックトラッキング』のさらなるテクニックはこちら!

さてさて、人が一番わかってもらいたいのは『自分の気持ち』です。


ここを否定されると傷つき、受け止めてもらえると、それだけで心が楽になる。

人は自分の話した『内容(言葉)』以上に『感情』への理解を示してもらうことに安心感を覚えるのです。


ですので、相手の話の中にその感情を表わす言葉、


『嬉しい・悲しい・悔しい・楽しい・不安・寂しい』……

などなどが織り込まれていた場合には必ず繰り返すようにしてください。

ポジティブ・ネガティブ、どちらの感情でも同じ。


『相手の言葉をそのまま繰り返す』の次なるテクニックが、


『感情に寄り添う』

です。

例えば、


「明日の給食、揚げパンだって」

その後に続くのが、

    ──「揚げパンって大好き! すっごく嬉しい!」
    「〇〇ちゃん、揚げパン大好きだもんね。嬉しいね!」

    ──「最悪なんだけど~」
    「明日、揚げパンかぁ。そりゃ最悪だね」
『嬉しい』『イヤだ』という相手の感情への共感を、その言葉を繰り返すことにより伝えていきます。

仮に「明日、揚げパンなんだ」という事実の部分の繰り返しを省いたとしても、「嬉しいね」「最悪だね」などの感情表現は繰り返す。


また、


──「そういえば、揚げパン好きな△君ってね」

と続くなら、焦点はそちら。

『揚げパン』関連でなく『△君』に関する言葉を選んで『バックトラッキング』です。


たとえ同じ始まり・同じ言葉を使っていたとしても、何を伝えようとしているのか、はそれぞれに異なってきます。


『揚げパン』が本題に入る前の『つかみ』として使われている場合もありです。

そういった話に、いつまでも『揚げパン』関連ワードばかり拾っていては「私が話したいのって、そっちじゃないから!」のような感じになってしまいます。


ですので、相手の話は本気で聴かないとダメなのです。

これが一番大事。

相手は真剣に話に耳を傾けてくれている姿勢に対し『安心感』『親近感』を抱きます。

そして「この人とは話しやすい」「この人になら、もっと話をしてもいいかな」と思ってもらえるのですね。

この感情のない『信頼関係』はありえません。


さて、相手を思い、理解しようとする姿勢により『信頼関係』のようなものができ始めると、今度はまた少々『バックトラッキング』の難易度を高める要因が出てきます。


話しやすすぎて、こちらが繰り返しのテクニックを挟む隙がないほどのマシンガントークが繰り広げられる。


『聴いてほしい』というのは、そもそも『話したい』なので、これはこれでいいんです。

それなりの信頼関係が構築されてきている証拠。


ですが、


せっかく話しているのだから何らかの反応は欲しい。
でも、話をさえぎられるのはイヤだ……



わがままなようですが、これが普通。


まずは『うなずき』や『相づち』です。


その間にもしっかりと相手の話を聴いていきましょう。


カウンセラーの方たちは、相談者の話を丸ごと再現できるほどの集中力で理解しようとしてくれている、といいます。

さすがプロですね。

でも、これは本当に大事なこと。

私たちはその道のプロではありませんが『人の話を聴く姿勢』としてはここを目標にしましょう。


なぜ『バックトラッキング』のスキルを身につけたいのか?


話しを聴くことで、相手のことを理解したいと思っているからです。


そのために必要なのは、安心して話をしてもらうこと。

ですので言葉を繰り返し「ちゃんと聴いていますよ」「あなたのことを理解しようとしています」の気持ちを伝える。


これが『バックトラッキング』、カウンセリングの世界では『オウム返し』と呼ばれる技術の根底にあるものです。


単なる『テクニック』としてだけで捉えると、ここの部分がおろそかになりがち。


相手を意のままに操る技術でも、対人関係で優位に立つためのテクニックでもなく、本来は相手に安心して心を開いてもらい、悩みや不安を取り除いてもらうために使われる技術なのですね。


カウンセリング



── 少し話を戻します……


マシンガントークへの『バックトラッキング』はとりあえず『うなずき』『相づち』。

これだけでも「話をちゃんと聴いてもらえている」という気持ちになりますが、さらにその気持ちを高めてもらうために、


『相手の話をまとめる』

というのも有効な手段です。


話しをまとめる、つまり『要約』ですね。

これは会話ではなく本などでもそうですが、読んでいなければできないこと(当たり前ですが)。

さらに『飛ばし読み』『ななめ読み』でも、ムリ。

『要約』は、案外難しいのです。


しかも本と違い、人の話す内容は『起承転結』がしっかりとあるわけでもなく、必ずしも整合性が保たれているわけでもない。


ですので『相手の気持ちを汲み取り、それに即した要約をする』、これは本当に真剣に話を聴いていなければできないことなのです。


では続いて、その『要約のバックトラッキング』について。

まとめていってみましょう。

★ 相手の話を『要約』! 押さえておきたい2つのポイント

ポイント

『要約のバックトラッキング』は難易度もワンランクアップです。


人が話す内容には、そのままの事実と、そのことをどう思ったか、のような感情部分とに分けられています。

例えば、


「今日久しぶりにおばあちゃんに会ったんだ~。元気そうでなんか嬉しかったな」

でしたら、

  • 『今日おばあちゃんに久しぶりに会った』『元気そうだった』: 実際の出来事(事実)
  • 『だから嬉しかった』: 話し手の感情
のような感じです。


『要約』でポイントとなるのは、こちらの2つ。

そして、この2つを元に、相手の気持ちを汲み取り、その言葉を伝える、というテクニックです。


上記の例でいえば、

    「うん。これからもおばあちゃんには元気で長生きしてほしいね」
などといったフレーズを返していきます。

    ──「うちの犬、私に全然懐いてくれないんです。

    奥さんには懐いてるんですよ。もうべったりなくらい。

    やっぱり自分は仕事で家にいないことが多いからなんでしょうか。それとも相性?

    いや、子犬の時のしつけで何か間違ったことをしてしまったのかも……いずれにしても、私、ヤツ(犬)のことは大好きなんです。

    だから何とか懐いてほしいんですよね。このままだと、今はやりの『フラリーマン』になってしまいそうで……」
うーん。

悩みなどを率直に話せる関係になると、格段に文字数が増えてきますね。

実際にこのお悩みに応えていってみましょう。


まずはここから『気持ち(感情)』抜きの『事実』だけを抜き出していきます。

  • 飼っている犬が全然懐かない(でも奥さんには懐いている)
  • 思い当たる理由はいくつかある(が、はっきりはしていない)
この部分をまとめ、バックトラッキング。基本の要約ですね。

    「ペットのワンちゃんが懐いてくれないのですか。でもその理由ははっきりしていないのですね」

    (※ このような場合は相手の使った言葉通りでない方がいい場合が多いです。『うちの息子が』を『ご子息』『坊ちゃん』なども)
続いて『気持ち』の表われている部分。

  • 飼い犬のことは大好きだ
  • 何とか懐いてほしい
  • このままだと家に帰るのが憂鬱になってしまう(フラリーマン: 仕事が終わってもまっすぐ家に帰らない人のこと。現在急増中)
そして、大事なのは彼がどのようなことを思ってこのセリフを口にしたのか。

一番気持ちの重点が置かれているのはどの部分か、です。

  • このままでは家に帰ることが憂鬱になること
  • 飼い犬に懐いてほしいこと
これは後者が正解。

飼い犬が懐いてくれないから、家に帰るのが憂鬱なのです。

逆は、ないです。

家に帰るのが憂鬱だから犬が懐いてくれないわけではない。


そして、

  • 今は懐いてくれていないが、それでも犬のことは大好きであること
ここもポイント。

ですので、

    「そうですね。そんなに大好きなワンちゃんが懐いてくれなかったら家にも帰りたくなくなってしまいますよね」
そして最後に『事実』『気持ち』部分の要約をドッキングです。

まとめると同時に、彼の本当の気持ちを代弁するような形でバックトラッキング。

ここは『同じ言葉』にこだわる必要はありません。


相手の気持ちを察する言葉(カウンセリング用語では『共感の言葉』と呼ばれます)を伝えましょう。

    「大好きだからこそ、余計につらいのですね」

    「そうなんです! ただの同居ペットと思えれば、ここまでつらくは感じないはずなのですが ── 好きだから!」
と、相手にもご自分の心の内を再確認してもらうことができます。


犬

この『共感の言葉』が見当違いだったら?


と、心配になるかもしれませんが、ここに至るまでの適切な『バックトラッキング』と相手の表情や声のトーンなどをしっかりと見て、聴くことができていれば「この言葉で大丈夫だ!」と思えるはずです。

(※ NLP用語では『ペーシング』と呼ばれるテクニック。こちらに関しましては次回以降にまた詳しくお話させてください。カウンセリング用語では『傾聴技法』のひとつとして括られています)


そして、会話のキャッチボールが進んでいき、もう少し具体的に、


「休みの日には散歩に行こうかなぁ」
「奥さんにアドバイスもらってみようかな」


などなど、多岐にわたる話題が繰り広げられ、相手の心は徐々に解きほぐされていきます。


話を聞いてほしい。
その話に理解を示してほしい。
中でも特に自分の気持ちを受け止めてほしい。


ですので、バックトラッキングというテクニックを使い、

  • お話をしっかり聴いています
  • 内容も理解しています
  • あなたのお話と、そしてあなたのことも知りたい・受け止めたいと思っています
を伝えます。

安心して悩みや不安を打ち明けてもらい、心の負担を少しでも減らしてもらうためのものがカウンセリングにも用いられる『オウム返し』の技術です。

そこから派生し、対人関係全般に役立つテクニックとして生み出されたのが『バックトラッキング』。


まずは相手を受け入れ、真剣に話を聴くこと。

そして、その気持ちを汲み取り、そこから察知できる言葉を伝える。


その相手が患者さんであっても、取引相手や恋人、それ以外の誰であっても、基本姿勢は変わりません。


『バックトラッキング』、ぜひ活用し、相手が安心して話のできる環境を作り出してあげてください。

「バックトラック」が有効とされるのはどうして? 「心理学」からわかること

バックトラッキング


ここはサラッといきましょう。

先ほどこっそり触れたのですが『社会的比較理論』です。


『自分のことを知りたい』

という欲求はだれもが持っているもの。

そのための『ものさし』とされるのが『他者(他人)』です。


例えば『自分はよく食べる方か。小食な方か』を知りたい場合。

まず人は『他者』以外のものからその情報を得ようとします。

カップラーメンを一度にいくつ食べることができるかに挑戦、食べ放題のお店で自分の限界まで食べ続ける、などですね。


でもこれでわかるのは『自分が食べられる量』だけ。


そこで、友達などと一緒に食事をし、


「オレは、あいつほどは食べられない」
「あいつには勝った」


などと比較することで、結果的に『自分はどちらかといえばよく食べる方だ』、などと結論するわけです。

ですが、その際『フードファイター』など、明らかに自分とはかけ離れた『食いっぷり』の人たちが引き合いに出されることはありません。

判断基準とするのは、自分と似たような相手です。

そして、今後誰かと食事に行く場合には、なるべく同じくらい食べる人を誘う。


「お前、食べすぎじゃない?」
「もっと食べろよ!」


などと言われるのはちょっとイヤだ。

できれば心地いいと思える相手と食事をしたい。


そのため、

  • 『自分と似ている他者には肯定的』
  • 『自分と似ている他者に好感情を抱く』
といった心の働きが無条件に起こることに。

これを『類似性の法則』といいます。


そして『バックトラッキング』。

基本は、

    『相手を受け入れる』

    『相手が肯定しやすいよう同じ言葉で繰り返す(そう、その通り! の合いの手は、聴き手の言葉に対しイエスと言っているのと同じ)』
これをされると、心地いいのですね。

否定されず、受け入れてもらえる。

そして、常に「イエス!」と言い続けていられる。

人は『ノー』と言うことに『ノー』と言われること同様、少なからず抵抗感を持っているのです。


つまり、上記の通り『バックトラッキング』により、相手の話に理解を示し、話しやすい雰囲気を作り出していくことは、結果的に、

  • この人は自分の話をしっかり聴いてくれている
  • 話の内容に理解も示してくれている
だからそんな相手のことを、

    → この人は自分と考え方も似ている
    → この人と自分は似ている
そして『類似性の法則』により、その相手に対し、

    → 好感を抱き、肯定的な評価を与える
    → 信頼関係が築きやすくなる
となっていきます。

ですので『バックトラッキング』のテクニックは、人の心を自然に動かす有効なテクニック、とされているのです。


ただし、一つだけ、そして一番気をつけていただきたいのは『わざとらしいのはダメ』ということ。


初めの方に挙げた小学生たちのように「もうお前とは遊ばない!」な雰囲気になってしまいますので、あくまでも自然に、相手が気持ちよく話せるようなスキルを身につけていくことが大事です。


初めは基本の『バックトラッキング』から。

徐々に経験値を上げ、高度なテクニックも自然に行えるよう、段階を踏んでいきましょう。

『バックトラックキング』のまとめ ★

まとめ
くだらない例を挙げすぎてしまったため長くなってしまいましたが『バックトラッキング』を会話術として活用していくためのポイントはそれほど多くありません。

    ① 相手の話の中の『事実』部分を、そのままの言葉を使い返す
    ② その中にある『感情のワード』を繰り返す
    ③ 会話のブロックが大きくなった時(話が途切れなかった時)には、内容をまとめて相手に返す
大きく分ければ、この3つだけです。

それぞれのポイントは?

    『①』のポイント

  • 相手の使った言葉で繰り返す

    → 自分の言葉に言い換えるのではなく、あくまで『相手の言葉』として、そのまま繰り返してください

  • 『②』のポイント

  • 『嬉しい・悲しい』など、感情を表わしている言葉は必ず繰り返す
    (※ 自嘲気味にあえて反対の感情を言葉で表わしている場合などは別。これは聴いていれば、大体わかります)

    → 人は話の内容もさることながら、自分の気持ちに理解を示されると非常に安心感を覚えることができます

    → ネガティブな感情を表わした言葉も同様。むしろこちらの感情への共感の方が安心感・信頼感をもたらす場合も。

  • 『③』のポイント

  • 話の中の『事実』を要約 / 相手の『感情』を要約 の2パターン

    →『②』からもお分かりいただけますように『感情』の要約を返す方がより効果的ではあるのですが、

    →「これこれこういうことがあったので(事実)、○○と感じている(感情)のですね」などと合わせて返すと、相手にも「ちゃんと話を聴いてくれていて、さらに理解もしてくれている」と感じてもらいやすくなります

  • 最後のポイント

  • 的確な『バックトラッキング』により相手の気持ちに寄り添いながら会話を進めていき、そこから察せられる『相手の気持ち』を伝える

    → ここは相手の使った言葉でなくて構いません

    → 相手が心の中で思っていることを代弁するような形で、その言葉を伝えてください

    → 特に悩みなどの相談を受けた場合などでは、相手にかなり楽な気持ちになってもらうことができます

    (※ これには『バックトラッキング』による会話以外、話し方や表情などにも気を配る必要があります。それらについては、機会があればまた……)

終わりに……

心


人の話を繰り返す、と聞くと、どうしても前述の『小学校時代の寒い思い出』を想像してしまいがち(私に限りかも)ですが、適当に(『テキトーに』の方)ではなくしっかり技術として身につければ、相手に安心感を持ってもらえる……


心理学、さすがです。


ちなみにこの『さすが!』などの言葉は『相手の感情』というより『自分が相手に対して思った感情』。

ですので、このようなタイプの言葉(『すごいね』や『偉いぞ』などなど)は『相手の感情に寄り添う』というのとはちょっと違うんです。


── さてさて、最後にこのようなことを言うのもどうかと思うのですが、結局一番大事なのは『相手をわかろうとする』その姿勢。


今後の皆さまの人間関係がますます良好なものになりますよう、少しでもそのお手伝いができていたらうれしいです!



今回も、長文に最後までおつきあいくださり、本当にありがとうございました。