──『フット・イン・ザ・ドア』?

ドアに足を入れる……?
もしや強引なセールスマンとか容疑者の家に踏み込む刑事とかのこと?


警官


イメージ的には何となく合っています。
日本語でいうと、だいたいこんな感じ。


『玄関に足さえ入れてしまえれば、商品は売れたも同然』

訪問販売員さんたちの間では、もはや挨拶レベルの常識的な言葉かもしれません。


── 自信が凄すぎる……
一体どこから、そんな強気なセリフが出てくるんだ!?



『人の心理を知ること』から、出てくるのです!


『フット・イン・ザ・ドア』はれっきとした心理学の用語。

人の心の自然な働きにヒントを得て、それをビジネスや恋愛、その他交渉などに活かしているのがこちらのテクニックです。


使い方によっては非常に便利なツールになってくれるもの。


今回は、この強気全開のテクニック『フット・イン・ザ・ドア』についてのご紹介です。


どのようなテクニックなのか?
なぜ『玄関に足を入れたら交渉が成立同然』となるのか?



などなど、心理学からの視点も含め、ビジネスや恋愛に活かせる参考例等紹介いたします。


テクニックと知らずに何気なく使っている方も多いかと思いますが、


『こういうわけで、こうなる』


という部分を知り、ポイントを押さえた活用で、今後の交渉術にお役立ていただけましたら幸いです。

『フット・イン・ザ・ドア』はこんなテクニック!

『フット・イン・ザ・ドア』とは、


『初めの簡単な依頼を遂行することで、それよりもハードルの高い本来の依頼も応諾しやすくなる』

といった心理の傾向をついたテクニックのこと。


    『玄関に足さえ入れてしまえれば』 = 『簡単な依頼を応諾してさえもらえれば』

    『商品は売れたも同然』 = 『本来の依頼を応諾されたも同然』

薄々お気づきになっている方もいるかと思いますが、今回の『フット・イン・ザ・ドア』とセットのようなテクニックが『ドア・イン・ザ・フェイス』です。


『ドア・イン・ザ・フェイス』では初めに『断られるようなムリなお願い』をしてから『本来のお願い』。

『フット・イン・ザ・ドア』ではその逆。

初めにするのは『誰もが聞き入れてくれるような簡単なお願い』です。

そして、その『第一弾・簡単なお願い』が聞き入れられ、実行に移してもらった後でハードルを上げた『第二弾・本来のお願い』をする。


  • ドア・イン・ザ・フェイス
    『ムリなお願い(最初)』 → 『簡単な本来のお願い』
  • フット・イン・ザ・ドア 
    『簡単なお願い(最初)』 → 『それよりは難易度の高い本来のお願い』

本当に真逆なのですね。


ですが、最終的に『本来のお願い』が聞き入れてもらいやすくなることは同じ。


じゃあ、順番関係ないんじゃ……?


一見矛盾しているように感じます。


なぜ真逆の2パターンでの結果(本来の依頼を聞き入れてもらいやすくなる)が同じになるのか?


訴えかけている『心理』の部分が違うからなんです。


『フット・イン・ザ・ドア』とは、どのような心理に訴えたテクニックなのか?

そこに訴えかけられると、なぜ大きな依頼まで引き受けてしまうのか?



続いて『心』の動きと絡んだ部分に焦点をあて『フット・イン・ザ・ドア』を見ていきましょう。

『心理学』の視点からの『フット・イン・ザ・ドアテクニック』

心理学


初めにする依頼は『誰もが簡単に引き受けてくれそうなお願い』。

ですがこれ、何でもいいわけではないんです。

当然といえば当然ですが『本来のお願い』との関連のあるものでなければ意味がない。


例えば、


『旅行で家を空けている間、花壇に水やりをしておいてほしい』

が本来のお願いなのに、


「このマンガ貸して」


から始めるなどですね。


繋がりがわかりません。

これでは関係のないお願いを単に2つしているだけになってしまいます。


『この依頼からのこの依頼』という段階がわかりやすいものほど効果的。

というわけで、こちらの『フット・イン・ザ・ドア』は『段階的要請法』とも呼ばれています。


問題は『簡単なお願い(小さな依頼)』をしてから関連する『本来のお願い(大きな依頼)』をすると、なぜ応諾が得やすくなるのか、です。


  • 『ジャムの瓶の蓋を開けてもらう』
    →『冷蔵庫の位置を手前にずらしてもらう』
  • 『ジャムの瓶の蓋を開けてもらう』
    →『テーブルに食器を並べることをお願いする』

こちらの2つのパターンで見てみましょう。
(※ 冷蔵庫を動かすことと食器を並べることは、受け手にとって『同等の依頼の大きさ』で『蓋を開けるよりはどちらも難易度は高い』という設定)


まずは第一の依頼。

    「ジャムの瓶、蓋が硬くて開かないんだけど、ちょっと開けてもらってもいい?」
これを女性に頼むのはどうかと思いますが、大抵の男性ならこのお願いには快く応じてくれるはず。

    「ん、いいよ。はい、開いた!」
さて、ここから第二の依頼が2パターンに分かれるわけですが、その前に、この依頼を実行した彼の心の中では何が起きているか。


    『ジャムの蓋を開けたオレ。やっぱり力あるな』

    『ジャムの蓋を開けたオレは親切な人間だ』

などと、無意識のうちに自分のこういった特徴についての認識が行われているのですね。


自分について知っていること、つまり『自分とはこのような人間である』という思い(自己概念)を誰もが心に持っています。

そしてそれを『オレは悪人だ』『どうしようもないヤツなんだ』などではなく『いいヤツだ』という肯定的なものとして維持していきたいと願っている。


ですので、相手の依頼に応じた理由を『肯定的な自分の特徴』によるもの、と捉えるのです。


そしてここがちょっと面白いのですが、上記の例、ジャムの蓋を開けるという行為をすることで、依頼の受け手が、


『オレは親切な人間だ』

とだけ、自分の特徴を認識したとします。

ですが、依頼した側から、その行為に対し、


「ありがとう! あなたって本当に力持ちね! 頼りになるわ~」

などと言われると、


『そうか、オレは力持ちなんだ!』


仮に本当は力持ちではなくても、今までそんなこと一度も思ったことがなくても、このように心は認識するのです。


素直というか、単純というか……


実際に依頼をする際、ここは結構なポイントとなる部分なのですが、とりあえず、話を戻します。


先ほどの2つの『第二の依頼』ですね。


  • 『力持ち』という肯定的な自己概念のみを持っている彼
  • 『親切』という肯定的な自分だけを認識している彼

どちらにどの依頼をするか、によって受け入れてもらえる確率、もしくはより気持ちよく引き受けてもらえる率が変わってきます。


たとえば『オレは力持ち』のみの自己概念を形成している彼に、

    「ありがと! じゃあ、ついでに食器並べるのもお願いしてもいいかなぁ」
── 微妙……

    「それ、オレの力って、必要? 自分でやってよ(または『自分でやればいいのに……』と思いながらも並べてはくれる)」
これが『冷蔵庫動かして』の方であれば問題なし。

    「お安い御用! ちょっとと言わずにどこまででも動かしまっせ!」
な感じになるはずです。


では『オレは力持ち』の認識のみ持っている彼に、食器を並べてもらう(第二の依頼)ことを応諾してもらうためにはどうすればいいか。


第一の依頼が完了した後に、

    「ありがとう! 本当に優しくって親切だよね。助かっちゃう♡」
お礼と同時に『あなたは親切な人だ』という特徴をこちらから伝えてしまうんです。
すると、

    「皿? 10枚でも20枚でも、どこまでも運ぶよ!」
と快く応じてもらえる可能性が高くなる。


『フット・イン・ザ・ドア』が、有効なテクニックとされるのには、一つではなく、いくつかの理由が挙げられるのですが、ここも、そのうちの一つのポイント。


『簡単なお願い(小さな依頼)』をしてから関連する『本来のお願い(大きな依頼)』をすると、なぜ応諾が得やすくなるのか?

なぜ第一の依頼の完了後に、相手の特徴的な部分をこちらから伝えると、快諾してもらいやすくなるのか?


『自己一貫性の動機』と呼ばれる心理に訴えかけることになるからです。

★『自己一貫性の動機』って何?

『自己一貫性の動機』または『自己一貫性への圧力』『自己一貫性の原理』などとも呼ばれる心理とは、


    『一貫した人間でありたい』

    『一貫した人間であると思われたい』

という欲求のこと。

コロコロと態度や発言内容を変える人間とは思われたくないんです。


前述の通り、人には、


『自分とはこういう人間である』

という『自己概念』があり、できれば肯定的なそれを維持したいと考えています。

ですのでそこは変えたくはない。


その上、先ほどの例でも書きました通り『親切なオレ』も「あなたって、本当に力持ちね!」のように言われることで、それ(力持ちであること)も自分の特徴的な部分なのだ、と再認識させられてしまいます。


そしてこのように実際の自分とはかけ離れている特徴だとしても、一度『瓶の蓋を開けた力持ちの自分』という認識が明らかなものとなると、そうありたい『強い自分であり続けたい』と思うようになるのですね。


だから、続く『強い自分なら引き受けるはず』と思われる『本来の依頼』にもできる限り応諾したいという心理が働くことになります。


また、自己一貫性の動機とは別に、


『なぜ今の自分はこのような情動(嬉しいとか悲しいとか怒っているとかの感情)・態度・ものの考え方をしているのか、ということを、自分の行動を観察することである程度推測している』

とも考えられています。

なんだかややこしいとを言っていますが、つまり、この例でいえば、『ジャムの蓋を開ける』という行動により、


  • なぜならオレは親切な人間だから(蓋を開けたの)だ
  • オレは力の強い人間なのだから(蓋を開けるのは)当然だ

のような再認識が心の中でなされることになるのですね。


『自分の行動を観察することで、自分の情動や態度、考え方を部分的に知ることができる』

このような考えを『自己知覚理論』と呼びます。


これらを踏まえ『フット・イン・ザ・ドア』が人に与える影響の流れを、あらためて追ってみましょう。


まずは『初めの依頼を遂行』。

簡単なお願いなので、誰もがおそらく『依頼通りの行動』をとります。


その行動をとったことで、


『○○した自分とはこういう人間である(親切な行動をとった自分は、親切な人間である)』

との認識が植え付けられます。


すると、


『自分は一貫した人間でありたい』
『一貫した人間だと思われたい』



『自己一貫性の動機』が発動され、自己概念を維持したい、という欲求も生まれてきます。

『第一の依頼』により認識された『自分とはこういう人間である』の部分を変えたくなくなる。

『親切』なら『親切』であり続けたいという欲求です。


ですので、できることならそれに即した『第二の依頼』も応諾したい。


そうすることが「オレってこういう人間なんだ!」の維持にとって、非常にベストな選択になるからです。

    「なんでジャムの蓋開けるのはよくて、食器を運ぶのはイヤなわけ?
    親切な人だと思ってたのにガッカリ!」

    「冷蔵庫はムリって、力持ちレベル低っ!
    期待して損した!!」
これは、イヤ……


ショック

でも、その行動によってどのような『自分とはこういう人間である』との認識を得ているかは、本人以外にはわからないんです。


前述の例のように『強いオレ』に対し『親切なあなた』への第二依頼をしてしまうことになってしまうかも……


ですので第一の依頼を実行してくれた後に『あなたは親切な人だ』『あなたは力の強い人だ』といった特徴的な部分を依頼者側から伝え、再認識してもらうことが実は案外重要だったりするのです。


このプロセスがなくてもそれほど変わらない場合もあるのですが、第二の依頼を応諾してもらえる確率は格段に上るはず。


さて、ではなぜ人は『期待外れ!』と思われることを嫌うのか?


普通に考えてもそう思われるのがイヤなことはわかるのですが、ここには、


    『困っている人がいたら助け合うのが当然』

    『他人から受けた行為と類似する行為を自分も他人に対して行うべき』

『社会的規範』または『返報性の規範』とも呼ばれる無意識のうちに誰もが持っているルールが深く関係してきます。


これは『フット・イン・ザ・ドア』だけでなく、『ドア・イン・ザ・フェイス』やその他対人関係にまつわるテクニック全般に係わってくるもの。


この規範が大前提としてあるからこそ、相手の心に働きかけ、影響を与えることができるのです。

★『社会的規範』とは?

『社会的規範(返報性の規範)』というのは、人が社会の中で生きていくために作り上げてきた暗黙のルールのようなもののこと。


先ほど挙げたものの他にも、


    『何かをしてもらったら、自分も同じような行為を相手に返したい』

    『受けた恩義に報いたい』

    『他人に大きな損害を与えるようなことはするべきではない』

    『社会全体にとって不利益になるようなことは避けるべきだ』

などなどこれら規範が、何か行動を起こそうとする時、人の心には無意識に働きかけてきます。


少し大昔に話しは飛びますが、原始の時代などでは、


「コイツ、みんなと違って良くないヤツだ!」
 

と、思われてしまってはアウト。

狩りも子育ても、危険な生き物から身を守ることも、すべて一人で行わなければならなくなる。

それはムリです。

生き延びることができません。


だからこそ、これら社会的な規範に基づいた行動をとる。

このような規範を作り上げ、従うことで生きてきたのが『ヒト』です。


そしてその規範を作り上げてきた理由というのが、


『良好な対人関係を維持したい』

という欲求。


『フット・イン・ザ・ドア』とは、


  • 一貫した人間でありたい、または一貫した人間であると思われたい
  • 自分のとった行動から『自分とはこういう人間である』と部分的に推測し認識する
  • 社会的規範により、基本的には『誰かの依頼には応じてあげたい』と思う気持ちがある

    ➡ なぜならこれらは『良好な対人関係を維持したい』という欲求に基づいた心理だから
  • つまり、

  • 初めの誰にでもできるような依頼を引き受け、行動を起こすことにより
  • その行動が表わす特徴を持った(『○○をしたのだからオレは親切だ』『△△に協力するほど私は熱心な支援者なのだ』など)自分を認識し
  • 『一貫した人間でありたい』『そう思われたい』という『自己一貫性』への欲求のため

    ➡ 本来の依頼でもある2回目のハードルの高いお願いにも応じやすくなる
  • その理由は、

  • 人が、このような心理に至る傾向にあるのは『良好な対人関係を維持したい』という基本欲求に基づき作り上げられてきた『社会的規範』を行動の原理としているから

こうした人の心理をついたテクニックです。

『フット・イン・ザ・ドアテクニック』についてのアレコレ♪ ビジネスや恋愛では?

テクニック

人は誰かと仲良くしていきたい生き物なのですね。
何とも愛らしい……


さて『フット・イン・ザ・ドアテクニック』は、このように人の心理をついたものなのですが、一歩間違えると『非常に強引』なやり方となってしまいます。


『玄関に足さえ入れてしまえれば、商品は売れたも同然』

どう考えても、警戒レベルの行動です……


ですので、ビジネスシーン・恋愛テクニックとして活用するにはあくまで相手の気持ちを大事にする姿勢が求められることになります。


また、本来の『フット・イン・ザ・ドア』では、


『小さな依頼』 → 『本来の大きな依頼』

への2段階。

その変形バージョンとして、


『小さな依頼』 → 『小さな依頼』 → 『本来の大きな依頼』

へと繋げるものもあります(こちらの方が有効である、とされています)。

実際に行う場合には、回数にはそれほどこだわらなくてもいいかと思うのですが、こだわってほしいのは、


『必ず依頼を実行してもらってから次の依頼をする』

口約束だけでは効果は薄れます。


まずはビジネスシーンから。

『口約束だけバージョンではどうなるのか?』も含め、いくつかの場面を見ていきましょう。

ビジネスで活かせる参考例!

    「今日、会議前にコピーを人数分頼んでいいか?」

    「わかりました。やっておきます」

    「ありがとう。君は仕事が早いから助かるよ。
    そうだ、もう一つ頼みがあるんだが……明後日までの報告書も頼めないだろうか?」

    「……」
口約束だけバージョンだとこんな感じ。


実際にコピーを取り、そのことで『仕事が早い』と言われた(または自分でその認識を得た)からこそ、やっかいな報告書の件も引き受けよう、という気になるんです。


これは仕事なので、引き受けざるを得ないかと思うのですが、もはやこれでは『フット・イン・ザ・ドア』に関係なく、ただ単に上司からの命令ですね。

報告書を書き上げた彼(彼女)は、今後その上司を極力避けようとするかも。

少なくともテクニックが功を奏した結果とは別物の感情が生まれます。


口先の応諾ではなく、依頼の完了後に第二の依頼を、が鉄則です。


以下、注意点・ポイント等を挙げていきますので、参考にしていただければと思います。

★ 辞表を提出した優秀な部下を引き留める!

    「そうか、残念だよ……辞める前に一つだけ引き受けてくれないか?」
これは『フット・イン・ザ・ドア』だけではなく『返報性の規範』との合わせ技。


つまり『辞めることを快諾してくれたことへのお礼』のような気持ちから、この『一つだけ』を引き受ける率は高くなるかと思います。


『フット・イン・ザ・ドア』のテクニックはここから。

『一つだけ』とお願いしていた依頼が完了してからです。

    「さすがだね。君みたいな優秀な弁護士はなかなかいないよ。
    そうだ、この案件について、意見だけでも聞かせてくれないか」(依頼の実行完了)

    「なるほど。そういう考え方もあるな。
    どうだ、この件だけでも、一緒に解決してからでも辞めるのは遅くないんじゃないか?」
弁護士VS弁護士……


高度な駆け引きが繰り広げられそうですが、辞めたいと思った理由によっては、そのまままた働いてくれることになるかもしれません。

★ ショップ店員さんはちょっとした『フット・イン・ザ・ドア』の使い手だ!

これは、典型的な例。

初めに、

    「何をお探しですか?」

    「ごめんなさい。自分でゆっくり探したいので」
この一言が言えなかった場合には、かなりの確率で、何かを購入することになると思います。

すべての店員さんが意識的に行っているわけではないと思うのですが、

    「パンツですね? それならお似合いになりそうなのが……少々お待ちくださいね」

    「お待たせしました。これなんかどうでしょう。お色もそのバッグにぴったり」

    「ぜひ一度穿いてみてください。あ、あちらが試着室になります~」
これ、すべてお客さんは依頼を受けている形になっているのです。

    「何をお探しですか?
    (教えてください)」

    「少々お待ちください
    (待っていてください)」

    「これなんかどうでしょう
    (バッグの色とマッチしていることも、ご自分の目で確かめて)」

    「ぜひ一度穿いてみてください
    (これはそのまま。ですが、ここまでくると、さすがに断る雰囲気ではなくなります)」
……さて、この買い物で本当に自分の欲しかったものが買えたのなら「ちょっとうるさい店員さんだったけど、まぁいいか」となると思うのですが、


『そんなに攻めてこないで……』

と思いつつも断る機会を失ったままご購入、となってしまった場合には?


おそらくそのお店には二度と近寄らないのではないでしょうか(私だったら怖くて近寄れません)。

お客さんの様子を見て「あ、ノッてきてる。よかった、アドバイスが役に立ってるんだ」と思えない場合には、今後にとっての逆効果ともなり兼ねません。


ショップ店員さんを例に挙げましたが(わかりやすかったので)、相手あっての『フット・イン・ザ・ドア』です。


取引先との交渉などでも、


「こちらをご覧ください」
「いかがでしょう」
「どうぞお手に取って確かめてみてください」


などなど、テンポよく小さな依頼に伴う行動をとってもらうことで、最終的な交渉に繋げる、というのは有効な手段でもあります。


ですが、お互いに気持ちよく交渉などを行うためのテクニックであることを忘れ、その技に頼りすぎると、その場だけは何とかなっても次回に繋げることは難しくなりますのでご注意ください。

★ 一週間だけ試供品を使ってみてください!

試供品

これもよくありますね。

で、これは非常に成功率の高いパターン。


無理強いの要素が少ないからです。


一週間経って、イヤなら約束通り返せばいいだけ。

が、実際にはその後の買い取り率はかなり上がります。


これは初めに『その商品を知ってもらう』ということを依頼しているようなもの。


知ってみた結果『案外いい』と思ってもらえれば、少し変形型の『一貫性』と言えばいいのでしょうか、『使い続けたい』と感じてくれる傾向は高くなるのです(知らない商品をいきなり売り込むよりは)。


さらには、


「一週間使っておいて、そのまま返すっていうのも何となく悪い気がするなぁ」

など『社会的規範』による心理も買い取り率を高める一因となります。


また、これとは少し違うのですが、


「自分の会社の商品についての『推奨文コンテスト』などを開催すると、推奨文を書いた社員の方がその商品について支持する率が高くなった」

という実例もあります。


『この商品はここが大変優れています』

という文章を書いた(行動)ことにより、その内容を自分自身で信じようとする。

これもわかりやすい人の心理です。

★『検索』させるのも『フット・イン・ザ・ドアテクニック』?

CMで流れた商品や、ネット通販など。


検索する、ということは、その商品に興味を持っているから。

つまり、


「この商品が気になる」

「どんな機能があるのかな?」

「みんなはどんな感想を持っているんだろう?」


などなどと思ってそのサイトに行くわけです。


「なるほど。よし、納得した。完了!」


とはならないのですね。


『検索している』 = 『その商品が欲しいと思っている自分』

を維持したまま、その行為を完結したいと思っている。


『検索』というのはその商品を扱うサイトからの依頼。


「商品について、知ってください」

「みんなのレビューを見て、良さをわかってください」


そして、その後の本来の依頼が、


ビジネス

「ご購入、よろしくお願いします!」

です。


ちなみにこの『レビュー』、口コミですね。

これは心理学では『漏れ聞き効果』とも呼ばれ『信ぴょう性が増す』という利点を持っています。


直接その販売元に「この商品はいいですよ!」と言われるより、そことは関係のないユーザーなどが個人的な感想として書いた意見。


自分に対しての評価も、本人から直接聞くより、

    「そういえば、○○課長、お前のこと相当頼りにしてるみたいな。
    こないだもお前のこと、部長にいい部下を持ったって話してたの聞いたぞ」
── もう、惚れます。


レビューにも、これと似たような効果があります。

本人から直接でなく、漏れ聞いた言葉は刺さる。

通販サイト、侮れないのです。

『フット・イン・ザ・ドアテクニック』は恋愛でも活用できる?

こちらに関しては、個人的には『何とも言えない』と感じています。


『玄関に足さえ入れてしまえれば、商品は売れたも同然』

こんな感じのことを好きな相手に対してするというのはどうも……


ただし、お互いにある程度の好意を持っている二人が、なかなか言い出せないお願いごとを相手に伝える場合には有効な技法にはなります。

    「今年の誕生日には彼の趣味の競馬場じゃなく、
    ディズニーランドとかそういう、デートっぽいところに行きたい!」
……おい、彼氏……


このようなお願いはぜひとも『フット・イン・ザ・ドアテクニック』で叶えましょう。

    「誕生日おめでと~!
    まずはプレゼントの軍資金を稼ぎに(大井競馬場)行こうぜ!!」
    (……彼氏……)

    「うん。でもその前に、手、繋いでほしいの」

    「何だよ、急に。恥ずかしいだろ」
    →(でも繋ぐ)

    「ありがと。
    やっぱり誕生日ってなんかいつもと違うことしたくなるんだよね。
    手、繋いでるとちょっと幸せかも」
    →(彼氏に『彼女を誕生日に『ちょっと幸せ』に思わせることのできるオレ』の認識が生まれる)

    「はいはい。おまえって、案外単純なんだな」
    →(照れてるんです)

    「そう? そんなことないって。
    でも遊園地とか一緒に行けたら、もっと幸せ感じちゃうかも。
    そっか、へへ、単純かもね」
    →(もうすぐそこに、ミッキーやグーフィーが!!)

    「まじ? そんな簡単なことでいいのかよ。
    なら行こうぜ、今から。
    どこ行く? 多摩テックとか?」
    →(ヘイ、彼氏!! そこ、かなり前に営業終了してます )

    「多摩テック……できれば東京じゃないとこがいいな。
    何となく旅行気分も味わえるし」

    「いいよ。じゃ、多摩テック却下な」

    「千葉は?」

    「さてはディズニーランドだな?
    よし! 今日はたくさん楽しもうぜ!!」
……こううまくいくと、何となく不本意な気分になってしまいますが、まあ、幸せでいいんじゃないでしょうか……


こういう意味での恋愛テクニックとしては大いに活用して欲しいと思います。


また、段階を踏んで、


『彼氏(彼女)に欲しいものを買ってもらう』

『片思いの異性をデートに誘う』


などにも有効とされていることも多いのですが、これは、


『まずはその前の段階を踏んでから』

が、間違いなく正解です。

テクニックとしては優秀なので、このようなことに使えないことはないのですが、ビジネスシーンも含め、特に恋愛では、


『相手との良好な対人関係を維持したい』

この感情が根底になければ、成立し得ないもの。

まずは、自分を知ってもらい、相手自身のこと、興味を持っていること、考え方なども知った上でのアプローチが不可欠です。


『フット・イン・ザ・ドア』ではダメ、なのではなく、その前段階として活用できる人の『心理』がたくさんある、ということなのですね。


一番大切なのは好きな相手を好きでいること。
これは簡単。


自分を好きになってくれる相手のことは本能的に嫌いにはなれない、というのも人の心理なのです。


恋愛で一番大事なのはひとえにこれ。

好きな相手のことを思うこと。


テクニックに頼らず、大好きな相手が何をすれば楽しいと感じてくれるか、喜んでくれるかを考え実行に移すことが一番。

遠回りのように感じるかもしれませんが、それが最短のアプローチです。

ファイトです! 応援しています。

終わりに……

フットインザドア


デートに競馬場はないわ……


原始の時代に強烈なライバル(恐竜とかサーベルタイガーとか、その他 恐すぎるヤツたち)からたまたま生き延びるための賢さを発揮し、絶滅を逃れたのが現在の『人』です。


そこに用いられたのは武器でもテクニックでもなく、


『良好な対人関係を維持したい』


という感情だけ。


人の心理は複雑なようでいて、案外単純なのですね。


愛らしい……



さてさて──

ちょっと脱線が過ぎてしまいました……


ですが、


「オレ、人でよかったわ」

「あたしのルーツって、みんな仲良しをモットーとしてた時代から続いてるのね」

「多摩テックは楽しかった……」


皆さまのどこかの部分に何かが届いていましたら、本当にうれしいです。


毎回長文となってしまいごめんなさい。


最後までおつき合いいただけましたことに、本気で感謝しております !
ありがとうございました。