心理学の分野だけでなく、ビジネスや恋愛にも活用できる『返報性』。
ビジネス

また隣の山田さん(世話好き・56歳)に肉ジャガをもらってしまった……
お返しにオレの渾身の力作『ガンプラ』でも渡しとくか……



ちょっと残念な感じになってしまっていますが、これも一応、返報性の法則(原理)の一種です。


この『残念感』をなくすためにも必要となってくるのが『自己開示』と呼ばれる行為。

自分情報を、相手に少しずつ伝えていくことなんです。


「えー! 自分アピールって、ウザがられるヤツじゃん!!」


それは『自己顕示』のほう。

「アイツって、自己顕示欲すごくね? かまってちゃんかよ」とか言われちゃう、あっちのほうです。


『開示(かいじ)』と『顕示(けんじ)』。

名前の響きもなんとなく似ていて紛らわしいのですが、実は、


『相手とのコミュニケーションづくりに重要な役割を果たす』
『やりすぎると、ロクなことがない』


くらいに違うもの。


というわけで、


『自己開示と自己顕示の違い』

を含め、


『返報性と自己開示って、なんか関係あるの?』


についてガッツリ解説いたします。

皆さんのスッキリに少しでも役立てていただければ幸いです。

『返報性』ってなに?

簡単に言ってしまうと、


『何かをしてもらったら、それと同じくらいのお返しをしたくなる心理』

のこと。

冒頭の彼もそうです。

いつも肉ジャガやらお漬物をおすそ分けしてくれる山田さんに対し、


「もらいっぱなしは、なんだかムズムズする。オレも何かお返しをしないと……」


そこで『ガンプラ』。

完璧なチョイスミスだとは思うのですが、気持ち的には間違っていません。


── さて。

人というのはもともと皆、基本的には『利己主義者』だとされています。

自分の利益が一番。

ですが、同時に、


『他人との良い関係を維持していきたい』

という欲求も持っているんですね。


矛盾して……


ません。

誰かに何かを貰っても、


「お返しをしたら自分の持ち物(財産や労力など)が減ってしまう!」

と、意地でも自分の利益を守っていれば、一時的にそれらを守ることはできます。

でも、長い目で見れば、損しかしないんです。


人から受けた恩義に報いることができない人に対し、周りはそのうち手を差し伸べなくなってきます。

モノをくれなくなるだけでなく、困ったときに手助けさえしてくれなくなる。
孤立してしまうんですね。


現代でも孤立は怖いですが、大昔(原始時代とか)だったら『孤立 = 死』、怖さレベルの桁が違います。


それはイヤだ……ということで、


『何かをしてもらったら、それと同じくらいのお返しをしよう!』
(他人との良好な関係を維持していくために!)


人はこうしたルールのようなものを作り上げてきました。


これが『返報性』です。
貰ったら返す。


ただし、こうした損得勘定に関係なく、


『困っている人を見たら無条件に助けたくなる』

という心理に基づいたものだ、という主張もあります。

こっちのほうが、なんかいい。


……ですね。
でも、


  • 人と良好な関係であったほうがお得
  • 無条件に助けたくなる

どちらが出発点だったにしても、


『お返しをしたくなる心理』

を人は持っていることになります。

返報性の種類は4つ。


    ① 相手が自分のことを好きでいてくれる気持ちに応えたくなる『好意の返報性』
    ② 自分を嫌っている相手を好きにはなれない『敵意の返報性』
    ③ 相手に譲ってもらったら、自分も譲らなければと感じる『譲歩(じょうほ)の返報性』
    ④ 自分の情報を教えてくれた相手には、自分からも同じくらいの情報を伝えたくなる『自己開示の返報性』

少しひねりを加えれば、恋愛やビジネスに活用することもできますよ!(悪用もできる)


活用法も気になるところですが……今回は措いておき、続いて、


『返報性と自己開示の関係』

についてみていってみましょう。

『返報性』と『自己開示』の関連性は?

    「私、煮物作るの得意なのよ。
    だから遠慮しないで食べてね」

    「いつも美味しくいただいてます。
    オレ、料理は全然ダメで。作れるのってカップラーメンくらいっすね」

    「あら、若いんだからちゃんと栄養摂らなきゃダメよ」

    「いや、さすがにいつもカップラーメン食べてるわけじゃないっすから、大丈夫っす」

    「さては彼女の手料理ね?
    うちのコなんて、おふくろの飯より彼女の飯のほうが美味い、とか平気で言うのよ」

    「彼女っすか……ほしいっすね―」

    しばらく立ち話は続く……
……何が言いたかったのかというと、『山田さんとオレ君が互いに伝えあっている情報の濃さ』が同レベルであるということなんです。


  • 山田さんの『煮物が得意』という情報に対して
    → オレ君は『自分は料理ができない』ことを伝える
  • 『食生活の心配』をしてくれる山田さんの気持ちに応えて
    → オレ君も『いつもカップラーメンではないから安心して』を伝える
  • 山田さんの『うちのコの彼女事情』を教えてくれたお返しに
    → オレ君が『彼女がいない』ことを伝える

『何かしてもらったら、それと同じくらいのお返しをしたくなる(返報性)』

という法則(原理 ・ルール)に従い、オレ君も、


「山田さんが教えてくれた『山田さん情報(何か)』と同じくらいの『自分情報(お返し)』」

を返していくことになります。


そして、


「こう聞かれたら、こう返そう」
「こう答えた方が、反応がいいかな」


などと考えることなく、単純にそのままの『自分情報を相手に伝える』という行為が『自己開示』と呼ばれるもの。


山田さんは本当に煮物を作るのが得意だし、オレ君には栄養もちゃんと摂ってほしいと思っています。

別にいい人のフリをしたいから言っているわけではないんです。


オレ君も(56歳のお隣のおばさん相手ということを差し引いても)正直に自分のことを話していますよね。


つまり『自己開示』と『返報性』の関係というのは、


    ◎自分(山田さん)のありのままを飾らずに相手(オレ君)に伝える → 自己開示
    山田さん → オレ君

    ◎相手(山田さん)から『相手情報』を教えてもらうと、こちら(オレ君)からも同じくらいの深さ・濃さの『自分情報』を伝えたくなる → 返報性
    オレ君 → 山田さん

  • 『オレ君』から情報を得た『山田さん』はさらに自分についての情報を伝える → 返報性 + 自己開示
    山田さん → オレ君
  • 『山田さん』から情報を得た『オレ君』は、それに見合うくらいの自分の情報を伝える → 返報性 + 自己開示
    オレ君 → 山田さん

下2つが永遠に続いていくイメージです。

お互いの情報のキャッチボール。


でも、この返報性関係なしに会話をしてしまうと、

    「私、煮物作るの得意なのよ。
    遠慮しないで食べてね」

    「ありがとうございます」

    「ところでアナタ、お料理はできるの?
    カップラーメンとかばっかり食べてちゃダメよ」

    「えっと……」

    「彼女はいるの?
    いるなら手料理を作ってもらうといいわ」

    「はぁ……」

    「うちのコなんてね」

    「……(オレ君、心の底からドアを閉めたくなる)」
これでは質問攻めと自分情報の押し売りになってしまいます。

もはや、会話ではないです。


自己開示で大事なのは、


    『お互い交互に情報を少しずつ交換していくこと』

    『段階を踏んで徐々に深い話題や秘密の共有、悩みを打ち明ける関係になっていくこと』

交換しあう情報の深さに応じて、お互いの信頼関係や絆は増していきます。

自己紹介レベルの相手より、お互いの弱さや欠点なども知っている相手のほうが信頼できますよね。


でも、関係を早く深めようといきなり『深い話題』に持っていくのはNG。


「初めまして。私、○○と申します」
「初めまして。私、実は娘のことで悩んでまして……」


とか……
引かれるだけ。怖いです。


打ち明け話のような深い話題は、相手をよっぽど信頼していないとできません。

お互いに自己開示を繰り返していくことによって、徐々にできるようになってくるもの。
焦りは禁物です。


じっくり時間をかけて作り上げてきた関係の相手に打ち明けられたからこそ、


「話しにくいことなのに、自分には話してくれた」

とさらに好意感情が増し、

打ち明けた人も、


「話してよかった! この人なら私の話を受け入れてくれると思ってた!!」

とお互いの関係がより強くなっていくのです。


そしてもう一つ、


『話を盛らない』

これ、大事。


この話をしたら相手はどう思うか。

嫌われるかもしれない。

自分の評価が下がるのではないか。



世話好き御年56歳の山田さんの逆バージョンです。


こうした不安から、ついつい本当の自分とはかけ離れた、むしろ『こうであってほしい自分』の情報を相手に与えてしまうこともよくあることなんですが……


これだと信頼関係の築きようがなくなってしまうんですね。


土台が『本当の自分とは違う自分』のようなものなので、仮に信頼関係ができあがったとしても、その関係は『本当の自分』に対してのものではないことになります。


自分の土地にではなく、手の届かない理想の場所に理想的な家が造られていくような感じ。

せっかく建ったその家(信頼関係)もただの願望、ファンタジーの中の産物です。


しかも、いずれウソがばれて、信頼関係自体も崩れてしまう。


でも、自分の欠点や弱みも含め、ありのままの自分を見せてくれる相手には、『この人はウソをつかない』という安心感と、信頼が生まれます。


ですので『本物の自分』と『本物の相手』とでぶつかり合う相互間での『自己開示』はコミュニケーションを作っていくうえで、本当に必要かつ大事なポイントになってくるんです。


オレ君と山田さんも、このように時間をかけて信頼関係を築いていけば、

    「私、煮物作るの得意なのよ。
    だから遠慮しないで食べてね」

    ……(中略)……

    「彼女いないどころか、友だちから趣味まで『オタクっぽい』とか言われるんすよぉ」

    「趣味があるなんて素敵じゃない。
    で、何なの、その趣味って」

    「笑わないで聞いてくれます?」

    「私と君の仲じゃないの!」(いつの間に……!!)

    「プラモっす。ガンダムのプラモデル作り」

    「あら~、男の子って感じでいいじゃない!!」

    「ホントっすか!じゃ、1個どうです?
    自分でもうまくできたな、ってヤツ、山田さんにプレゼントしますよ! いつものお礼も兼ねて!」

    「いいの? 大事なものなんじゃないの?」

    「何言ってんすか! オレと山田さんの仲じゃないすか!!」(何があった!)
『肉ジャガ』のお返しに『ガンプラ』を渡したとしても、残念感ゼロ。

渡されたガンプラも、山田さんちの目立つ場所で大切に飾られることになります(たぶん)。

めでたし、めでたし。


……細かい設定は別として、でもこれ(大筋は)、


『返報性』
『自己開示』


の連携によって得ることのできる、本当の話です。

『自己顕示』と『自己開示』の違い

アピール

ありのままの自分を相手にさらけ出す『自己開示』に対し、『自己顕示』は、


『見せたい自分を演出!』

自分の存在に注目してほしい、といった気持から起こる欲求。


似ているものに『承認欲求(しょうにんよっきゅう)』というものもあります。

こちらは『自分を受け入れてほしい』という欲求ですね。


もちろん『褒めてもらいたい』という気持ちもあるのですが、それと同じように『嫌われたくない』の欲求も強く持ちます。


自己顕示が、


『オレを見て!』

だとするなら、承認欲求は、


『自分のことを認めてもらいたい。でも、嫌われたり拒否されるくらいなら、人と関わりたくない』

被っているところと、正反対なところがあるんですね。


この2つの線引きは結構あいまいなので、同じように思われることも多いのですが、


『こんなオレを見てくれ!(表現型)』

VS

『受け止めてくれ!(受け身型)』



実は少しだけ違うんです。


さてさて『自己顕示』です。


これは誰もが持っている欲求。

特別なものではありません。


ただし、やりすぎてしまうとアウト。


人間なので、他人にいいところを見せたいですし、いい成績をとったら自慢もしたい。

でも、ホントにやりすぎ・盛りすぎには注意! です。


自分自身を実際以上によく見せるためにする行為のことを、心理学では『自己呈示(じこていじ)』と呼びます。


何か悪いことをしてしまい、つい言い訳をしてしまうのも自己呈示のひとつ。


遅刻したのはバスが遅れたからだ、とか。

結果的にそうなってしまっただけで、悪気なんて1ミリもなかった、とか。

『あくまでもボクがそう思ってるだけなんだけど……』の前置きを入れてから話始める、とか。



これらも全部、自分を守るため、人に悪い印象を与えないために行う自己呈示の一種です。
(※ たいていバレてしまいますが)


そして、自分を守るためでなく、積極的に好印象に持っていこうとするものの中に『自己宣伝の自己呈示』というものがあります。


自分を自分で宣伝しちゃう。

『オレってすごいんだぜアピール』です。


自己顕示欲の強い人はこの自己宣伝を得意技としていることが多い。

    「自分は有能です!」

    「今まで、○○人の敵を倒してきました!」

    「バレンタインデーの翌日は、毎年チョコを食べすぎて歯が痛くなります!」

    「今年の夏休み? またグアムだけど?」

    「いやー、昨日渋谷で逆ナンされちゃってさぁ。ま、いつものことだけどね」

    「こないだ私の煮物の味付け、三ツ星レストランのシェフに褒められちゃって。ふふふ」
山田さんまで!!
しかも『煮物』なのに『シェフ』!!


……で、これらすべて言っていることは『自己開示』と真逆です。


山田さんにばかり頼ってしまってごめんなさいなのですが、これはおそらくオレ君との間の信頼関係が何らかの形で壊れた結果かと思われます。


自分で自分を『私はできるヤツ!』と思わないと、心のバランスがとれなくなってしまったんですね。


だから『煮物なのにシェフ』、いや、三ツ星レストランへの逃避、幻想を言語化する自己顕示(自己呈示)で武装。

ちょっと心配です……


自分のありのままをさらけ出す『自己開示』と多少のウソも多少盛り込み、自分に注目を集めようとする『自己顕示(欲)』。


『オレってすごいよね』のアピールは、気持ちがいいんです。本人は。

でもやりすぎるとウソや盛った内容であることがバレるだけでなく、


『面倒くさいヤツ』
『うっとうしいヤツ』
『関わりたくないヤツ』
『寂しがりなのか?!』
『……はいはい』


などなど、ロクなことになりませんので、ご注意ください。

『自己顕示』って悪いこと?

自己顕示

いろいろ書いてしまいましたが、自己顕示自体はちっとも悪いことではありません。

これ、ないとむしろダメです。

50や60になっても自己顕示欲の塊、というのはイタいですが、若い人ならあって当たり前。


失敗や悔しい経験をしたあとで「こんなはずじゃない。オレはもっとできる人間だ!」と思うことは成長に繋がっていきます。

目の前に高い壁があっても「いける! オレならいける!」がないと、乗り越える気が起きません。


本当は、


『現段階ではこれが限界』
『そんな高い壁、乗り越えられるわけがない』


が真実の姿だとしても、自分を周りに大きく見せることでその事実を打ち消そうとしているのです。

そして前に進む。
カッコいい。


有言実行の自己アピール版みたいなものと言えばいいのか(わかりにくい)……


いずれは自分自身が『自己アピール』していた自分に近づいていきます。

そうしたらもう、無駄にアピールする必要もなくなるんです。


若い人の自己顕示欲が強いのは正常なこと。

ただし、大声で何度でも言ってしまいますが、


『やりすぎ注意!!!』

「どんだけ自分大好きだよ」感しか伝わってこないような写真(セルフィーなどなど)ばかりSNSに投稿するとか。

注目さえ集められればいいや、とやっちゃダメなことをガッツリ投稿してしまうとか。

リア充アピールが「もうわかったから」レベルであるとか。

自分の話(自慢系)はするけど、人の話はいっさい聞かないとか。


度を越した自己顕示にはネガティブなレッテルしか貼られませんので、本気で気をつけてください。


そしてもちろんですが、自己顕示欲丸出しの相手とは信頼関係が築けません。


好きな異性や親しくなりたい友だちや同僚、上司などには、カッコよさ(かわいさ)・有能さを激烈にアピールしたいところですが、ここは誠実さで勝負。

お互いに『自己開示』を繰り返しながら、時間をかけてじっくりと信頼を勝ち取ってくださいね。

『返報性』をめぐるあれこれをまとめる!

まとめ

『返報性・自己開示・自己顕示』について、最後にサクッとまとめてしまいましょう!

それぞれの意味は

  • 返報性:(他人との良い関係を維持していくために)『何かをしてもらったら、それと同じくらいのお返しがしたくなる心理』のこと
  • 自己開示: ありのままの自分についての情報を相手に伝えること
  • 自己顕示: 相手の反応を考えながら、自分をより良く見せるために自分の存在をアピールすること

自己開示と返報性の関係は

  • 相手が『自己開示』する 

    →『返報性(の法則・原理)』によりもう一方も『自己開示』

    → その自己開示を受けた相手にも『返報性』が働き、再び自己開示

    → それを受けた相手も……と続いていきます


    △返ってくる相手の『自己開示レベル』は、こちらが開示した情報と同レベルのものになる

    △深い内容の自己開示は、より相手との信頼関係や絆を深めてくれる

    △ただし、自己開示の内容は「自己紹介レベル」程度のものから徐々に深いものにしていくこと。焦らない!

    ➡ 相手について知りたいときには自分から自己開示をするといいですよ!

自己顕示と返報性の関係は?

やりすぎの場合、『自己顕示欲』によって盛られた内容の情報(多少のウソも含む)には、同様に盛られた情報、もしくは冷たい視線が返ってきます。

終わりに……

自己開示


自己開示と自己顕示、似ているようでイメージから何から、全然違いましたね。


返報性もいいものばかりではなく『敵意の返報性』などもあるとは……

確かに自分のことを嫌っている相手を好きにはなるのは難しいです。


でも、逆に考えれば、好きという気持ちがあれば、相手にも好きになってもらえるかもしれないということ。
ラ、ラッキー?!


また、自己開示のつもりが自己顕示になってしまっていることも結構あります。


うーん。これも、しょうがないですよね(と私は思う)。

だって、多少の自慢やちょっとくらいの『ドヤ!』はしたいし……


問題は『程度』です!


自己顕示欲は『こんな自分になりたい!』の表れ。

若い人の特権みたいなもの。

なりたい自分がないよりずっといいです。

やりすぎなきゃ、いいのです。



さてさて。
「どれがどれで、何が違うの?!」へのモヤモヤは少しでも薄まりましたでしょうか?


『返報性・自己開示・自己顕示』を上手に活かし、皆さまの対人関係がこれまで以上にうまくいくことを祈っております!


最後までおつき合いいただきありがとうございました。

(※ そして全国の山田さん……ごめんなさい)