認知バイアス……ってなに?

バイアス


あまり聞かない言葉かもしれませんが、

    「駅前に新しくできたパスタ屋さん、オレ君、行ったことある?」

    「いや、ないっすけど」

    「行ってみなさい! 美味しいから」

    「え、山田さん、食べに行ったんすか? パスタとか食うんすか?」

    「行ってないけど美味しいに決まってっるじゃない、毎日すごい行列なのよ」

    「山田さん……それ『認知バイアス』かかりまくってますって……」
山田さん(世話好き・56歳)のように、『思い込み』が認識を歪めてしまうことを指しています。


    『行列ができる店 = 無条件で美味しいと思い込む』

ですね。
(※ 相手も「56歳の山田さんがパスタ?!」という失礼なバイアスをかけていますが)


いつも閉まっている透明のドアがその日は開いているのに入ってこようとしない犬にも認知バイアス(犬だけど)。


    『このドアはいつも閉まっている = だから今日も入れないに違いない』

入っちゃえばいいのに……


そしてこの『認知バイアス』、心理学が嫌いになるくらい、とてつもない種類があるんです。

もう、人はどんなことにもバイアス(偏り)をかけているのでは? と思うほど。


『ノーバイアス・ノーライフ = 人間だもの』

なレベルです。

が、これは人の持っている考え方のクセのようなもの。


自分を知り、相手のことを知るためにも『認知バイアス』を制してしまいましょう。

相手の思い込みを上手に利用することで、恋愛やビジネスに役立てることもできますよ!



── ということで、


「認知バイアスとは? 簡単にサクッと教えて!」

のご要望にお応えします。

皆さまの認知バイアスについてのモヤモヤが少しでも薄れましたら幸いです。

バイアスにかかりやすいのはどうして?

世の中のすべての情報を正確に理解しようとしても、それらを完璧に正しく判断したり はっきりと真の姿を見極めるには限界があります。

そこで登場するのが、


『ヒューリスティック』

自分の今までの経験や、直観などを頼りにした、


『絶対に正解になるとは限らないが、だいたいうまくいくだろう』

という解決法を人は好んでとります。
(※ ヒューリスティックは『代表性・利用可能性・固着性』の3つに分類)

結果、


  • 風邪で死ぬことは普通ない
  • 警報機のベルが鳴っているが、たぶん誰かのいたずらだろう

のような、合理的とはいえない判断結果が生まれたりします。


本当は、死因としてトップに挙げられる『ガン』や『心臓病』に比べ、風邪をひく人のほうが圧倒的に多いんです。

だから死ぬ確率だって、その分高くなるはず。


でも『風邪 = 死因』という発想がわかない。


警報機のベルもそう。


『正解ではないかもしれないが、だいたい今までこうだった』

という経験により、今回もいたずらに違いない、と思い込んでしまうんです。

この思考方法というか問題解決方法が認知バイアスという思い込みを運んできてしまう……

ここを少しだけ覚えておいていただけるとうれしいです。

人の心はバイアスに満ちている!

先ほど書きました通り、認知バイアスの種類はものすごいことになっています。

全部はムチャなので、そのうち以下10個について簡単・わかりやすくご紹介です!


    ① 内集団バイアス
    ② 認証バイアス
    ③ 自己中心性バイアス
    ④ 第三者効果と自己高揚バイアス
    ⑤ 対応バイアスとセルフ・サービング・バイアス
    ⑥ ハロー効果
    ⑦ バンドワゴン効果
    ⑧ バーナム効果
    ⑨ フレーミング効果
    ⑩ アンカーリング効果

民族間の争いはなぜ起こる?『内集団バイアス』

内集団バイアスというのは、簡単にいうと、


    『自分の所属している集団をひいき目に見ること』

自分の属していない集団(外集団)との間に特に利害関係などがなくても、このバイアスは簡単にかかってしまいます。

★ なんで?

疑問

人は誰でも『自分とはこういうものだ』という自己概念を持っています。

そして、社会の中でどこかの集団に所属することで得られるのが『社会的アイデンティティ』です。

    「私は日本人だ」

    「私はエレファントカシマシのファンだ」

    「私はこのマンションの住民だ」
などですね。


これをできるだけ良い状態にしておきたいんです。


つまり上記の例でいえば、

    →「日本人を肯定的に見てほしい」

    →「エレカシ(略した)のファンたちがいい人間の集まりだと思われたい」

    →「このマンションは住民同士の仲も良く住みやすいところだと実感したい」
さらに比較をするときには、

    「日本人は○○の国の人に比べて優秀な民族だ」

    「エレカシファンは○○のファンより礼儀正しい」

    「このマンションに比べると、○○マンションは住民同士がギスギスしている」
のように、


    自分の属している内集団を『良いもの(肯定的)』

    外集団を『悪いもの(否定的)』

としてとらえやすくなります。

そのほうが、社会的アイデンティティが脅かされずにすむから。


この時点で『○○』の相手と喧嘩になってしまいそうですが、いき過ぎてしまうともっと深刻な争いに発展してしまうことも。

ちょっと怖いのです……

感情と理屈はどっちが強い?『確証バイアス』

『感情』の勝ち。

人が何かを判断するときには、


    『事実に基づいた理屈より、自分の感情が受け入れやすい内容のもの』

を優先的に受け入れます。

このときにかかっているのが『確証バイアス』です。

★ たとえば?

    「あのパスタ屋さん、実はそんなに美味しくないんですって」

    「そうなんすか?」

    「だって、佐久間さんがそう言ってたもの。
    美味しいって言ってるのって、河野さんだったのよ」

    「で、山田さんは、まだ食べてないんすよね?」

    「でも美味しくないのよ!
    だってだって、 美味しいって言ったの、あの河野さんよ!」

    「(……山田さん……河野さんと一体なにがあった……?)」
などもそう。


好きな人の意見はすんなり受け入れられるのに、嫌いな人が言うことはなかなか信じられなかったりします。

『嫌いな河野さんの言うことだから、ウソに違いない』のような確証バイアスがかかりまくっているためです。


また、人の第一印象がなかなか崩れないのもこの確証バイアスのせい。


初めて会ったときに「カッコいい!」と思った相手を後から「実はカッコ悪かった……」と認めるのはイヤなんですね。

自分の『人を見る目』まで否定することになるから。


だから、ひたすら『彼はカッコいい』に繋がる都合のいい情報を集めます。

都合の悪いものは見て見ぬふり。

そして最初のイメージ通りの『カッコいい彼像』を固めていくことになるのです。


第一印象は大事。

ここで『カッコよくない彼』のイメージを植え付けられてしまうとちょっとやそっとでは這い上がれなくなってしまいます。


身だしなみに清潔感さえあれば、相手に否定的にとらえられることはかなり防げます。


確証バイアスによって『カッコ悪い彼像』が固められていかないよう、ここだけは注意してくださいね。

○○に違いない! と実際のズレ!『自己中心性バイアス』

    『自分の容姿や振る舞い、言動などが、実際以上に周囲の注目を集めているのではないかと感じること』

……確かに自己中心的ともいえるバイアス。

でも、これも『単に目立ちたがり屋だから』などではなく、ちゃんとした理由があるんです。

★ 自己中心性バイアスがかかるのはどうして?

    「(無意味に相手の目に入るところをウロウロする山田さん)……♪」

    「なんすか今日は? やたらよく会いますね」

    「そうね~(なぜかクルリと一周回って見せる山田さん)♬」

    「どうしたんすか、具合でも悪いっすか?」

    「……」

    「えっ? なに? マジなんなんすか?」

    「……気づかないの?」

    「だから、なにがっすか?」

    「美容院行ってきたのよ! このイメチェンに気づかないなんて、信じられない!!!」
案外よくある……


なにか自分の中で変化があったとき、人は、


  • みんなになんて言われるかな?
  • 似合ってないって言われたらどうしよう
  • もしかして派手だった?

などなど、心の中で考えています。

山田さんもそう。


もしも美容院に行っていなければ「なんて言われるかな?」とは思いませんよね。

いつも通りなので。

でも、山田さんの今の気持ちはいつもとは違います。

そしてそのいつもとは違う心の状態を基準として、相手(お隣に住む『オレ君』)の反応を推測です。


美容院に限らず、人前で発言するとか、団体競技でみんなの輪を乱さないようにしなければとか。

そういうときには、ドキドキしたりいつも以上に緊張してしまうもの。


緊張

だから余計に、


『きっと自分は周りから注目されているに違いない』

と思い込みやすくなるんですね。
(※『スポットライト効果』とも呼ばれます)

でも、実際には思っているほどみんなは自分を注目していません。

このズレを生んでいるのが『自己中心性バイアス』。


また自己中心性バイアスのひとつ、『透明性の錯覚』というのは、


『自分の考えていることや感情が、実際以上に相手に伝わっているのではないか』

と感じる錯覚のこと。


逆に周りの目があるからこそ頑張れる、といった『観衆効果』という作用もあります。


人の目は気になりますが、観衆効果のように、パフォーマンスを高めるために利用することもできるんですね。

自分を肯定的に解釈!『自己高揚バイアス』(と『第三者効果』)

これはちょっと面白いです。

まずは『第三者効果』から軽くみていきましょう。

★『第三者効果』とは?

    「こないだテレビで観たんだけど、この近所で『人の家にゴミの入った袋を捨てていく』って犯罪が流行ってるんですって」

    「なんか、地味っすね」

    「でも、地味だけどイヤよー。投げ入れられたお宅の人たち、かわいそうよね」

    「そうっすね。かわいそうっす」
なぜ、自分たちが被害に遭うとは思わない?!

これが『第三者効果』です。


    『マスコミや広告などで知ったネガティブな情報の影響を受けるのは世間一般の人。
    自分や自分の知っている人には、その影響は及ばないだろう』

という全く根拠のない思い込み。

逆に、


    『ポジティブな影響をもたらす内容は、知らない人より、自分や知人のほうが影響を受けやすいはずだ』

これが『逆第三者効果』。


すごい自信。

この自信の出どころが、


『自己高揚バイアス』

認識の歪みです。

★『自己高揚バイアス』との関係は?

『自己高揚』というのは、


    『自分を肯定的にとらえるために、自分自身を解釈したり行動すること』

これがどうしてもできなくなると、自分より幸薄そうな人と自分を比較することで自尊心を保とうとします。
(※『下方比較』と呼ばれます)


つまり、


「自分や自分の知り合いはネガティブな影響を受けない。受けるのは世間一般の人たちだ!」

と思い込む『第三者効果』とは、


『自分や自分の知り合いは、世間一般の人より優れている』

という、『自己高揚バイアス』によって生じるもの。

自己高揚バイアスの一種なのですね。

『対応バイアス』と『セルフ・サービング・バイアス』

    「河野さんって、ホント、ルーズな性格なのよねー。遅刻ばっかりするんだから」

    「でも、こないだ山田さんもオレとの約束に……」

    「あれは出かけようと思ったら宅配便がちょうど来ちゃったんだからしょうがないじゃない」

    「(山田さん……わかりやすすぎる……)」
『対応バイアス』というのは相手の言動の原因を考えるときに発動するもの。

一方『セルフ・サービング・バイアス』は自分の言動の原因を探るときに見られるバイアスです。


相手の言動に対しては『(相手の)性格、態度、能力など(内的要因)』が重視されます。


    「遅刻するのは性格がルーズだから」
    (対応バイアス)

自分のやったことに関しては『そのときの状況など(外的要因)』を重視です。


    「遅刻したのは出がけに宅配便がたまたま来てしまったから」
    (セルフ・サービング・バイアス)

都合がいい……


『対応バイアス』は人間の持つ根本的な原因探しの間違い、ということで、


『根本的帰属の誤り』

とも呼ばれています。

『帰属』というのは『どうしてこうなったか、という原因を考える』のような意味。

これが根本的にバイアスによって間違ってしまっているんですね。


そして、相手の行為を観察する側か、自分がその行為をする側か、によって変わってくることを、


『行為者―観察者バイアス』

と呼んでいます。


なんというか……面倒くさいですね。


このバイアスに絡んでくるのも、先ほど出てきた『自己高揚』です。

自分の自尊心を維持するためのもの。


ですので、自己高揚バイアス同様、行為の結果が良いものであった場合には、


『私が遅刻しないのは常識的で、人のことを常に考えられる人間だからだ』

のように解釈します。

状況ではなく、内的要因、性格や能力を持ち出してくるのです。

たまたまその日は早く起きただけ、宅配便が来なかったから、電車の連絡がスムーズだったから、といった外的要因は無視。


ここまで徹底されると、むしろ人が潔く思えてきます……

なぜか実際以上によく見える!『ハロー効果』

ハロー効果

これはけっこう有名。
(※『後光効果』『光背効果』などとも呼ばれることも)

「よくは知らないけど、名前だけは聞いたことがある」という方も多いかと思います。


    『人やモノのひとつの側面を肯定的にとらえると、ほかの側面にまで肯定的な評価が与えられること』

この思い込みが『ハロー効果』です。


さて、先ほどの山田さんもそうでしたが、人は好意を感じている人の意見は受け入れやすくなります。


  • 自分と似ているところが多い
  • 自分のことを褒めてくれる
  • よく会ったり話したりする人

などを好きになりやすいです。

そして、


『身体的な魅力度が高い相手』

に対しても、


  • 誠実な人に違いない
  • 頭もきっと良いはず

のように高評価を下す傾向にあります。
(※ これが『ハロー効果』)


例えば化粧品のCMにきれいな女優さんを使っているのは、


『この人がおススメしているのだから、良い化粧品に違いない』

といった効果を狙っているから。


情報番組で『ヤセる○○!』と紹介された商品が次の日にはスーパーから消えるのも、


「情報番組で紹介されたなら間違いない!」

というハロー効果により、みんなが買っていった結果。


テレビで観ていたときは高身長だと感じていたのに、実際に会ってみたら案外小柄だった、というのも、その俳優さんのハロー効果によるもの。

有名人だしファンだから、その相手は『高身長に違いない』です。


本当はきれいな女優さんがCMに出ているからと言って、それさえ使えば同じような美貌を手に入れることができるわけではないのに、


    『きれいな女優さんのおススメ』=『彼女のようになれるかもしれない良い商品』

ハロー効果により、こんな感じの図式ができあがります。

女優さんとセットでその化粧品がインプットされるのですね。


だから逆にその女優さんが不倫報道でもされようもんなら、あっという間にその商品自体の売り上げもガタ落ちになります。

商品と不倫はいっさい関係ないのに、そこはスルー。

『逆ハロー効果』により買う人は激減してしまうんです。

ブームはなぜ起こる?『バンドワゴン効果』

こちらもわりと有名ですね。


    『個人の判断より、大勢の人たちが決定したことのほうが正しいことのように感じる思い込みのこと』

『バンドワゴン』というのは『パレードの先頭を走る楽隊車』のこと。

『勝ち馬効果』『同乗効果』などと呼ばれることもあります。


パレードの先頭車ということで『流行に乗る』といった意味で使われることも多いです。

が、流行などのブームだけではなく、暴動やストライキ、デモなどを引き起こすのも『バンドワゴン効果』なんです。

★ 暴動やデモはどのようにして起きる?

デモ

人はそれぞれ違うので、沸点が低い人も高い人もいますよね。

この沸点を『閾値(いきち)』と呼びます。

『なにかをするために必要な最小の力』のことです。


閾値が極小の人(閾値0)がまずは、


「オレ、デモする!」

と立ち上がるわけです。

誰も参加していなくてもひとりデモでもいいくらいの勢いですね。

この人が扇動者(せんどうしゃ)になります。

ほかの人をあおってる感じ。
(※ 平和的なデモなどの場合は『先導者』的役割に)


すると今度は次に閾値の低い人(閾値1)が加わり、続いて閾値2,3……と続いていきます。

で、大規模デモ隊のできあがり。


この連鎖していく効果が『バンドワゴン効果』です。


ただ、扇動役の人がいても、その集団に続く閾値1の人がいなかった場合には連鎖が起こりません。

永遠に閾値0の人のひとりデモ。


ブームでも同じ現象が起こります。


仮に山田さんが、


「このエコバッグ、サイコー!」

と思っていても、それに続く『乗りやすい人』がいなければ、山田さんの一人エコバッグ状態が続くことになります。

ですがそこに佐久間さんが乗り、鈴木さんが乗っかり……と増えていけば、そのうち山田さんち一帯は、


『山田さんご推薦のレインボーカラーのエコバッグ』

を持って歩く主婦たちで埋め尽くされることに。

こうなってくると、もう並みの勇気では、


「そのバッグ……どこがいいの?」

とは言えない状況になってしまいます。

これも人の持つ心の作用。


多くの人が同じ行動(この場合はヘンなエコバッグを持つこと)をしていると、なんとなくそれが正しいことのように思えてきます。

オマエも同調せよ! と心理的な圧力がかかるのです。


ここで異を唱えてしまうと『異質』扱い。

仲間外れにされる可能性大です。


だからヘンだと思っていてもレインボーカラーのエコバッグを持つことを選ぶんですね。


今考えると「なんであんなのが流行ったんだろう……?」っていうものありませんか?

でも、持ってたりする。

『バンドワゴン効果』恐るべしです。

組み合わせれば効果もアップ!『バーナム効果』

占い師さんがよく使う手です。


    「誰にでもあてはまるような内容でも『あなたの性質はこうではありませんか?』などと言われると『すごい! 当たってる!!』と信じてしまう心理を突いた効果のこと」

「あなたは気の強いところもあるけれど、寂しがりな一面も持っていますね?」

のような感じ。

もうこんなの、万人にあてはまります。


ですが、この効果をうまく利用すれば壺は無理でも5,000円くらいのパワーストーン程度なら買わせることもできてしまうんです。

★ バーナム効果と一貫性

パワーストーン
    「あなたは気の強いところもあるけれど、寂しがりな一面も持ってますね?」

    「はい」

    「でも、お友だちと意見が食い違った場合、なにがなんでも自分の意見を押し通すようなことはないですよね?」

    「はい」

    「仲のいいお友だちがいる反面、苦手なお友だちもいますね?」

    「はい」

    「そして、今、自分を変えたいと思っている」

    「はい」

    「もちろん、それにはなにかに頼るのではなく、自分の力でそうしたいと思っていますね?」

    「はい」

    「でも、手助けしてくれる存在があれば、心強いとも感じている」

    「はい」

    「このパワーストーンは今のあなたにとって、その心強い存在になってくれると思うわ」

    「はい」

    「5,000円です。毎度あり」
『はい』のような話の内容を肯定する返事を繰り返すことに慣れると、次も『はい』と言いたくなるのが人の持つ心の作用、


『一貫性の原理』

と呼ばれるもの。


また、人は『はい』といわせてくれる相手を好きになる傾向が強いんです。

そして好意を持った相手の提案や意見は受け入れやすくなります。

先ほど出てきた『確証バイアス』がかかるためです。


だましてモノを売るのはダメですが、自分の意見を受け入れてほしいときなどには、


  • まずは『はい』と答えられる質問で相手の気分を良くする
  • 続けていくことで次も『はい』と言いたい気分に持っていく
  • そのうえで交渉

こうした手順を踏むことで、要請・要望はだいぶ受け入れてもらいやすくなります。

しかも好意感情のオマケつき。


テクニックを使ってる? とバレるほど露骨な場合は逆効果にしかなりませんが『はい』を引き出すバーナム効果。

相手との信頼関係構築にも、けっこう、有効なんです。

同じ内容の情報なのに受け取り方が変わる?!『フレーミング効果』

    『お勧め商品なのに4個も残っている』

    『お勧め商品なので4個しか残っていない』
どちらも4個残っているのは同じなのに、買いたくなるのは2番目の言い方のほう。

    『生存率30%』

    『死亡率70%』
も内容は一緒です。

『生存率30%』なら頑張ればなんとかなりそうな気もします。

が、『死亡率70%』と言われると、お先真っ暗感がすごいです。


このように、


    『同じ事柄でも、その情報をどのように表現するかによって、受け取り方が変わる』

これが『フレーミング効果』。


初めのほうに出てきた『ヒューリスティック』。

思考のクセに加えて、情報の提示方法によっても判断結果が変わってきてしまうんですね。

高いの? 安いの?『アンカーリング効果』

    『不確かなことを判断したり予想したりするときには、アンカーが判断に影響してくる心理作用のこと』
    (※『固着性ヒューリスティック』の別名でもあります)

なに言ってるのかわかりません……


たとえば、洋服やスーツを買うとき、

「前来た時のほうが安かった……」
「さっきあの店で買わなくてよかった~! 2,000円もこっちのほうが安い!!」


1つ目は、


『前来た時の値段』

を基準にして今の金額を見ているということ。

2つ目は、


『ほかの店での売値』

が基準。


1つ目・2つ目の金額がどちらも『15,000円』だったとしても、基準が変わると、


『高い・安い』

の感じ方も変わってくる、といった心理作用です。


アンカーというのは『錨(いかり)』のこと。

船を留めておくための重りです。
(※ 心理学ではアンカーを『初期値』としていることが多いです)


この心理作用を利用したテクニックが、


『ザッツ・ノット・オール法』

と呼ばれるもの。


ちょっと高いなぁ、と思っている人がついつい買いたくなってしまうテクニックです。

    「!! お刺身が1パック1,980円ですって!!
    (お隣のスーパーでは、確か似たようなのが1,500円だったはず……)」

    「あ、山田さん! あと10分待っててよ! タイムセールで1,600円になるから」
または、

    「じゃ、特別だ! これもつけちゃうよ!(美味しいお醤油がオマケにつけられる)」
山田さん、あっさりお買い上げ。


ポイントは『アンカーをどこに降ろしているか』です。


初めに1,980円のお刺身を見たときのアンカーは、


『お隣のスーパーの1,500円のお刺身』

のところで留められています。
だから1,980円は高い。


そして次にアンカーが落とされるのは、


『1,980円のお刺身』

高いのはわかっているけれど、もう一度隣のスーパーに行くのも……

と悩んでいる山田さんに、


『もう少し待てば1,600円』

という1,980円からドカンと下がった金額が提示されます。

初めから1,600円だとお得感がないんですね。

1,980円からの1,600円だからこそ効果あり、です。


また、なにかしらの特典(オマケ)をつけるのも効果的。


オマケ

お刺身自体に変わりはなくても、特典が付くことにより、お刺身の魅力度が上がります。


さらに、


『値引きしてもらった』
『特典をつけてもらった』


というのは、相手からの『譲歩』ということになります。

お店の人が山田さんのために、『お刺身をそのまま売る』という部分を譲った形です。


すると、


『私もなにかお返しをしなきゃ』

という心理が働きます。

この心理作用が『返報性』と呼ばれるもの。


好意でも譲歩でも、貰ったら同じくらいのお返しをしたくなる心理です。


だから、余計に『買わなきゃ』という気持ちになるのですね。

もうこの時点で『隣のスーパーに行こう』という気持ちはどっかに行ってます。


この『譲歩の返報性』を利用したテクニックで有名なのが、


『ドア・イン・ザ・フェイス』


こちらも原理は一緒です。


逆バージョンもあり。


「今月の売り上げ目標は100万円!」

のようなムチャを言う上司などに、それが状況的に本当にムチャであることを説明したうえで、


「70万円が限界です」

と低めに設定した数字を示し、その後、

    「せめて90万まで頑張ってくれ」

    「現状では、厳しすぎます」

    「では……85、いや、80万ならどうだ?」

    「きついですが……それならなんとか(本当は85万近くまでなら余裕)」
のように使うこともできます。
(※ 逆バージョンというほど逆ではないですが……)

100万円から70万円にアンカーの位置を変更することで、


『70万円に比べれば80万円は高い』

と相手は感じるようになります。
そして主張が通る。


怠けるために使ってはダメですが、アンカーリング効果を有効に活用したテクニックもなかなかの優れものです。

日本人と『認知バイアス』

いきなり毛色の違った話になってしまいますが、


『日本人は集団主義的な民族だ!』

とよく言われます。

これが、間違いではないか、という研究発表があったのですね。


集団主義というのはあまりいい印象を持たれないことも多いのです。


    みんな同じ。

    行動するのもみんなで一緒。

    結束力や協調性はあるが、その分個性がない。

    人より優れているとすぐに叩かれる  …… etc

自分より所属している集団の利益を大事にするが集団主義。

反対に自分の利益を大事にするのが個人主義、といった感じです。


個人主義の代表はアメリカ。


確かに集団主義的な部分も日本人にはあるのですが、ちゃんとした調査検証の結果、


『アメリカと日本の集団主義的の程度はそれほど変わりはない
(※ アメリカのほうが、集団主義的である、という実験結果が出たこともあります)』


では、なぜ『日本人は集団主義的だ』ということを多くの日本人さえ信じているのか、なんです。

ここにかかわってくるのが、


  • 対応バイアス
  • 確証バイアス

ではないか、と言われています。


前述のとおり、人は他人の言動の理由を探るときには『性格や態度』に要因を求めます。
(※『対応バイアス』)


そしてもう一つ重大な役目を果たすのが、かつての戦争です。


戦争中はみんなで一丸となって! のように集団主義的な行動をとりました。
戦争中だからです。


日本以外の国でも、こうした状況になれば集団主義的な行動を普通にとるはず。


でも『対応バイアス』により『戦争中だったから』という状況にはスポットがあてられず、


『日本人の性格・精神論』

的な部分だけがクローズアップされてしまったのですね。

(※ 日本をそのようにとらえている国は、自国の行為に対し『セルフ・サービング・バイアス』がかかっているので、戦時中という『状況』が重視されています)


そんな昔のことで……?!


と思うかもしれませんが、そこにプラスされるのが、


『確証バイアス』

一度『日本人とはこう』という姿ができてしまうと、このバイアスによって、さらに、


『やっぱり日本人はそう』

ますますイメージが固まってしまうのです。


だから日本人は『集団主義的』と言われ続け、最近の研究によって、


『そうでもない』

という結果が出た。


少し(かなり)話がそれてしまいましたが、『認知バイアスはこんなところにも潜んでいる繋がり』ということで、ついつい書いてしまいました……

終わりに……

心


毎日の生活でチョコチョコ顔を出してくる『認知バイアス』。

今回ご紹介したもののほかにも、もう本当にうんざりするほどあります。

    「たしかにねぇ……河野さんなんてバイアスかかりまくってるの、よくわかるもの」
とか言っている山田さん……


他人のバイアスには敏感に気づいても、自分のバイアスには気づいていない今の状態が、


『バイアスの盲点』

と呼ばれているものです。

自分のバイアスに気づき、


「私にも悪いところがあるのね……」

と思えたら、もしかしたら河野さんとも仲良くなれるかも……

『セルフ・バイアスチェック』は大事です!



ではでは。
長くなってしまいましたが最後までおつき合いいただき、ありがとうございました。


『認知バイアス』について、少しでもスッキリしていただけていたらうれしいです!